【論文紹介】 ザクロの葉エキスが糖尿病性腎症を軽減
- 2023/11/15
- インフォメーション
「糖尿病性腎症」は、糖尿病の三大合併症のひとつです。
腎症は、2型糖尿病患者の30~40%で発症すると報告されており、日本では透析導入患者の主な原因疾患の第一位で、約4割を占めています。
腎機能低下が進むと、むくみやだるさ等の体調不良だけでなく、病院通いなどQOL(生活・生命・人生の質)の低下原因となります。
日本は世界各国・地域で透析患者の有病率が台湾に次いで第2位(米国腎臓データシステム統計による)2020年の統計では、34万人以上(約363人に1人)が人工透析を受けている状況です。 1)
透析の医療費(年間400万~500万円程度)のうち、健康保険が3割ほど適用されるため日本で透析にかかっている医療費は、年間1兆円を優に超えると推計されます。
このようなことから、糖尿病性腎症を抑制することや糖尿病の予防・改善はQOLや医療費の削減のためにも非常に重要な事柄と言えるでしょう。
今回は【ザクロの葉エキスによる血糖値改善や糖尿病性腎症軽減】について述べている論文を紹介します。
【目次】
- ザクロの葉エキスによる糖尿病性腎症軽減
(1)目的
(2)対象
(3)方法
(4)結果
(5)結論
- まとめ
- ザクロの葉エキスによる糖尿病性腎症軽減効果
「ザクロの葉」は、抗酸化作用、抗炎症作用、血糖降下作用など薬用植物として用いられています。これらを考慮して、糖尿病性腎症におけるザクロの葉の保護効果を調べた研究報告があります。
【目的】
ザクロの葉メタノール抽出物(MPGL)には、潜在的な抗酸化作用、抗糖化作用、抗高血糖作用があり、糖尿病性腎症の進行を遅らせるのに役立つ可能性があるという実験的証拠を提供すること。
【対象】
ストレプトゾトシン(STZ)を注射し糖尿病を誘発したラット
※ストレプトゾトシン(STZ)は、血糖値を下げるインスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島β細胞を破壊し、糖尿病を誘発する作用をもつ。
【方法】
上記の対象ラットに、ザクロの葉メタノール抽出物(MPGL)を8週間毎日経口投与する。
ラットは5つのグループに分けた。(すべてn=6)
- 正常対象群
- STZ誘発性糖尿病群
③ MPGL100mg/kgを3回投与し、治療したSTZ誘発性糖尿病群
④ MPGL200mg/kgを3回投与し、治療したSTZ誘発性糖尿病群
⑤ MPGL400mg/kgを3回投与し、治療したSTZ誘発性糖尿病群
血糖値の計測を治療前、1回目、2回目(6週目)、3回目(8週目)に実施。
期間後に体重測定、血清やプールした24時間の尿の分析、屠殺直後に両方の腎臓を解剖し、重量計測や抗酸化能力を推定した。
【結果】
<血糖値>
4週間までは血糖値に有意差はなかった。
グループ③のラットは8週間後に空腹時血糖値低下を示し、
グループ④⑤のラットは6週間後、8週間後の空腹時血糖値が有意な低下を示した。
→MPGL(ザクロの葉メタノール抽出物)は、抗高血糖作用を有しているが、強い抗高血糖作用は持たないと考えられる。
<腎肥大指数>
糖尿病を誘発したラットは体重に比例して腎肥大が観察されたが
グループ④⑤のラットでは、腎肥大指数(体重に対する腎臓の重量割合)が改善した。
→腎肥大指数の改善は腎機能低下抑制が期待できる。(腎肥大によって腎機能が低下する可能性があるため
<体重>
グループ②(糖尿病を誘発したラット)は、高血糖・低インスリン血症・筋肉消耗の増加・組織タンパク質の減少による体重の大幅減少がみられたが、グループ④⑤のラットは体重増加した。
→高血糖によって引き起こされる筋肉組織の損傷がMPGLによって予防されていることが示された。
<腎臓の抗酸化能力>
グループ③④⑤のラットでは、脂質過酸化レベルの大幅減少と
抗酸化物質のSOD(スーパーオキシドジムスターゼ)・GSH(還元型グルタチオン)・CAT(カタラーゼ)活性が上昇した。
<クレアチニン・アルブミン・尿素窒素・総コレステロール・中性脂肪・血清AGE(終末糖化産物)>
グループ④⑤のラットは、グループ②(糖尿病を誘発したラット)よりも血清アルブミンが増加した。
グループ③④⑤のラットは、糖尿病を誘発したラットよりも血清クレアチニン・尿酸窒素・総コレステロール・中性脂肪値・血清AGEが減少した。
※腎機能が低下すると、尿にアルブミンがもれて血中のアルブミンが低下する。
※クレアチニンとは血液中の老廃物のひとつで、腎機能が低下していると、尿中に排出されずに血液中に蓄積される。
※中性脂肪や悪玉コレステロールの高値は血管を傷つけ、動脈硬化を勧め、腎臓病の進行につながる。
【結論】
今回の研究によって、MPGL(ザクロの葉メタノール抽出物)は、抗酸化作用・抗高血糖作用・コレステロールや中性脂肪の改善・抗糖化作用を有しており、STZ誘発性糖尿病性腎症において保護作用を示した。
<参考文献>
1)わが国の慢性透析療法の現況(2020 年 12 月 31 日現在)
<論文要旨>
Journal of Traditional and Complementary Medicine | ScienceDirect.com by Elsevier
腎臓は「尿をつくるのが仕事」という印象かもしれませんが、なんと「寿命をも左右する人体の隠れた要」として研究者から熱い注目が集まっている臓器です。
<まとめ>
さまざまな臓器から情報を受け取って、血液の成分をコントロールしている「人体ネットワークの要。体内の環境整備屋さん」
悪くなるとむくみや高血圧など身体症状として分かりやすいので、QOLに影響しやすい非常に大切な臓器です。
腎臓の健康を守るためにも「ザクロの摂取」を。
そして、腎臓は特にAGE(終末糖化産物)の影響を受けやすいことが分かっていますので
「日ごろからAGEを増やさないように」
血糖値の上昇を抑える食生活(野菜やタンパク質などバランスよく、ビタミンACEやポリフェノールなど抗酸化作用が高い食品の摂取、添加物を控えること)や運動習慣、ストレスをためない(笑顔・笑うこともとても有効(^^)/)ことなどを心がけていきましょう。
♡皆さまの笑顔と幸せの日々を願っています♡
記事制作:管理栄養士 松下眞子(まつしたまさこ)
2001年 東京家政大学家政学部栄養学科を卒業。 同年に、管理栄養士国家資格を取得し、管理栄養士としての活動をスタート。 大手自動車メーカーの集団給食業務を経て、糖尿病専門クリニック、内科、健診センターで栄養と生活指導や特定保健指導を行う。
指導件数は延べ2500件以上になり、食と生活習慣・心理状況の関係性が深いことを痛感し、心理学を活かした食事・生活指導を企業や個人向けに行う。
その他、いちご大学アカデミアの講師・栄養セミナー・料理教室・雑誌・web記事の監修など。「食から笑顔と愛を広げよう!」をモットーに活動をしている。