【論文紹介】 ザクロの抗菌効果について

ザクロの美肌効果や生活習慣病などへの健康効果は広く知られるようになっていますが、さらにザクロの「抗菌効果」についての論文も多数発表されています。

今回はザクロの「抗菌効果」について2つの論文をご紹介いたします。

【目次】

1.  病原性黄色ブドウ球菌、大腸菌に対するザクロの阻害効果

2.ザクロの抗菌活性とβ-ラクタマーゼ産生性大腸菌に対する抗生物質との相乗効果

3.  まとめ

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1.  病原性黄色ブドウ球菌、大腸菌に対するザクロの阻害効果 (J-GLOBALsから引用。発行年2016年/発行国 イギリス)

(1)目的

ザクロの仮種皮と果皮副産物の主要な多価フェロール成分とその病原性細菌に対する抗菌作用について研究すること。

(2)方法と結果

【方法】

①ザクロ仮種皮と果皮副産物の主要な多価フェノールを50%(v/v)水エタノールで抽出し、RP-HPLC-DAD(*1),MALDI-TOF(*2),MS(*3)によって、キャラクタリゼーション(材料の構造や性質の調査、測定)した。

②ザクロ仮種皮(*4)と果皮の副産物である「多価フェノール」の病原性黄色ぶどう球菌,大腸菌に対する抗細菌作用を寒天拡散法(*5)によって調査した。

*用語解説*

1) RP-HPLC-DAD:(逆相高速液体クロマトグラフィー-ダイオードアレイ検出)液体試料に溶解している化合物成分を分離してどのような成分がどれくらい含まれているかを定性・定量分析する品質評価方法のひとつ。

2) MALDI-TOF:(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法) 分子量の大きな高分子化合物(生体分子であるたんぱく質・ペプチド・多糖分など)のイオン化に向くサンプルのイオン化法のひとつ。分析に必要なサンプル量がごく微量で良いという利点がある。

3) MS:(質量分析法)原子または分子をイオン化し、分離・検出する分析手法。化合物の分子量、分子式、および化学構造などに関する情報を得ることができる。

4) 仮種皮(かしゅひ、かりしゅひ)、または種衣(しゅい):果実の種子表面を覆う、鮮やかな赤色の部分。

ザクロは仮種皮を果肉として発達させる果実。

5) 寒天拡散法:寒天培地に試験対象微生物を全面塗抹し、その上に抗生物質や抗菌性物質を浸み込ませたペーパーを載せ、一定温度・時間で培養する。微生物の発育阻止円の大きさから、定性的に抗菌性物質に対する感性・耐性の確認、抗菌性物質の効力を評価する方法。 

【結果】

①ザクロ仮種皮と果皮副産物の多価フェノールは、アントシアニン,カテキン,タンニン,没食子酸,エラジン酸が豊富であることが同定された。

②ザクロ仮種皮と果皮の抽出物は、病原性黄色ブドウ球菌、大腸菌の増殖阻害作用を示した。

(3)結論

ザクロ多価フェロール抽出物は病原性黄色ブドウ球菌・大腸菌の増殖と生存を阻害することを示唆している。

2. ザクロの抗菌活性とβ-ラクタマーゼ産生性大腸菌に対する抗生物質との相乗効果(J-GLOBALsから引用。 発行年2019年 /発行国 オランダ)

(1)目的

ザクロ果実のサルコテスタ(*1)は「PGTEL(ポメグラネート種皮レクチン)」と呼ばれる抗微生物レクチン(*2)を含んでいる。

「PGTEL」の抗菌活性効果とβ-ラクタマーゼ(*3)産生性大腸菌に対する抗生物質との相乗効果を研究すること。

*用語解説*

1)サルコテスタ:ザクロの肉質の外側の層で、イチョウの種の形態。薄い黄褐色。ザクロの果実の中で、種子を包む部分。果粒の周りにある透明な袋状の組織で、果汁を保持している。

2)レクチン: 一般的に、植物・動物・微生物等に存在するタンパク質または糖タンパク質のうち、糖に対する特異的結合活性をもった物質の総称。

3)β-ラクタマーゼ:βラクタム系抗生物質(例:ペニシリン、セファロスポリン)を分解する酵素。細菌がβ-ラクタマーゼを産生すると、βラクタム系抗生物質が効果を発揮しづらくなる。さらに、他の細菌にも伝播してしまうと多剤耐性菌が広まり、治療の選択肢が制限され、感染症の治療が難しくなる。

(2)方法と結果

【方法】

β-ラクタマーゼを生産できる5種の薬剤耐性大腸菌分離株に対するPGTELの抗菌活性について

「最小阻害(MIC)及び殺菌(MBC)濃度」をブロス希釈(*1)により測定。

「形態計測および生存性分析」をフローサイトメトリー(*2)によって行った。

「超微細構造変化」を走査電子顕微鏡により評価した。

PGTELと抗生物質および抗生物膜効果との潜在的相乗効果を評価した。

*用語解説*

1) ブロス希釈:抗菌薬の感受性を測定するための希釈法。微生物の成長や抗菌薬の効果を観察することができ、抗菌薬の選択や治療方針の決定に重要な情報を提供する。

2)フローサイトメトリー:不均一な混合液中の細胞を計数・選別・特性解析するための技術。

【結果】

①PGTELは、全ての分離株に対して最小阻害(MIC)及び殺菌(MBC)濃度値がそれぞれ12.5~50.0μg/mL及び25.0~100.0μg/mLの範囲で抗菌活性を示した。

②ほとんどの分離株に対してPGTELは少なくとも10時間成長開始を延期した。

③最小阻害(MIC)において、レクチンは細菌細胞のサイズ・形状および構造の変化を引き起こした。

④PGTELと抗生物質および抗生物膜効果との潜在的相乗効について。

PGTEL-セフタジジムの組合せは、全ての分離株に相乗効果を示した。

相乗効果はアンピシリン(1つの分離株),カルベペニシリン(1つの分離株),セフォタキシム(1つの分離株),セファレキシン(4つの分離株)とセフロキシム(3つの分離株)で検出された。

PGTELはすべての分離株に対して、抗生物膜活性を示し、6.25μg/mL以上のバイオフィルムの50%以上の阻害を引き起こした。

(3)結論

PGTELの抗菌効果と抗生物質との相乗効果は、この果実由来分子が多剤耐性感染の将来の治療の可能性を有することを示している。

4. まとめ

食中毒や骨髄炎や肺炎、とびひ等さまざまな炎症の原因となる病原性黄色ブドウ球菌・大腸菌。

その抗菌活性だけでなく、抗生物質治療との相乗効果が期待できるとは、本当に素晴らしい効果だと思います。

天然の抗菌効果をもつザクロは、食品の抗菌フィルムとしても利用されてきているようです。

今後もザクロの健康・美容効果をご紹介していきますのでお楽しみに♪

皆さまの健康を願っております。

<参考文献>

Copyright 2016 Elsevier B.V., Amsterdam. All rights reserved. Translated from English into Japanese by JST.

Copyright 2019 Elsevier B.V., Amsterdam. All rights reserved. Translated from English into Japanese by JST.

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★記事制作:管理栄養士 松下眞子(まつしたまさこ)

2001年 東京家政大学家政学部栄養学科を卒業。 同年に、管理栄養士国家資格を取得し、管理栄養士としての活動をスタート。 大手自動車メーカーの集団給食業務を経て、糖尿病専門クリニック、内科、健診センターで栄養と生活指導や特定保健指導を行う。

指導件数は延べ2500件以上になり、食と生活習慣・心理状況の関係性が深いことを痛感し、心理学を活かした食事・生活指導を企業や個人向けに行う。

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