【論文紹介】 ザクロの心血管疾患のリスク軽減効果~

悪性新生物に次いで日本の死因の第2位となっている「心血管疾患」

心血管疾患とは、心臓へ血液が十分に行き渡らなくなる病気で心筋梗塞、狭心症、不整脈などの原因となり、特に心筋梗塞は突然死の最大要因といわれています。

ザクロは「心血管疾患リスクを軽減する効果があるのではないか」と研究した論文が2つありますのでご紹介します。

【目次】

1.  血液透析患者における動脈硬化性心血管疾患リスクと血圧・脂質組成に及ぼす効果

(1)目的

(2)方法と結果

(3)結論

2. 心血管疾患の一因となる終末糖化産物の前駆体「メチルグリオキサール」を減らす効果

(1)目的

(2)方法と結果

(3)結論

3.   まとめ

1.  血液透析患者における動脈硬化性心血管疾患リスクと血圧・脂質組成に及ぼす効果

(1)目的

ザクロジュースの摂取が、血液透析患者の高血圧及び脂質組成、および動脈硬化性心血管疾患の発症率に及ぼす影響を評価すること

※動脈硬化性心血管疾患は、血液透析患者の主な死因原因である

(2)方法と結果

【方法】

対象と期間:血液透析患者101名、1年間

内容:「週3回ザクロジュース(ポリフェノール0.7mM)摂取群」と「週3回プラセボジュース摂取群」に無作為に分類し

①血圧(収縮期・拡張期)と脈圧、血漿トリグリセリドレベル、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)及び総コレステロールについて4回のモニター実施

②心血管イベントの発生率を調査

【結果】

ザクロジュースの摂取群は、収縮期血圧、脈圧、血漿トリグリセリドレベル、高密度リポタンパク質(HDL)が有意に改善した。

(3)結論

定期的なザクロジュースの摂取は、血液透析患者のアテローム性動脈硬化の加速、および動脈硬化性心血管疾患の高発症率を減少する可能性がある。

2.  心血管疾患の一因となる終末糖化産物の前駆体「メチルグリオキサール」を減らす効果

(1)目的

いくつかの実験的研究では、柑橘類とザクロのポリフェノールが反応性α‐ジカルボニルを除去し、終末糖化産物(AGEs)の形成を防ぐことが証明されていますが、ヒトを対象とした研究は不足していた。

そこで、今回は健常高齢者を対象として「ザクロ抽出物+柑橘類果皮抽出物の複合体」を摂取することによって「終末糖化産物(AGEs)」形成における代表的な前駆体である「メチルグリオキサール(α-ジカルボニルの一種)」の血漿レベルに及ぼす影響を評価した。

※タンパク質と糖が加熱されてできた物質「終末糖化産物(AGEs)」の形成は、細胞内の酸化ストレスを増加させ、血管に蓄積すると、心血管疾患の一因となる。

(2)方法と結果

【方法】

対象 : 36名の健常高齢者    

期間と内容 : 「200mgのザクロ濃縮物と500mgのオレンジ類の果皮抽出物カプセル」と「プラセボカプセル」のいずれかを4週間摂取する

【結果】

4週間の「200mgのザクロ濃縮物と500mgのオレンジ類の果皮抽出物カプセル」摂取群では、メチルグリオキサールの血漿中濃度は9.8%低下した(-18.7 nmol/L;95%CI:-36.7、-0.7 nmol/L;p = 0.042)

(3)結論

「ザクロとオレンジ類の複合体の補充は、メチルグリオキサールに関連する症状を緩和するために有望である」可能性を示唆している

3. まとめ

心血管疾患の一因である高血圧や脂質異常症の改善や終末糖化産物(AGEs)の形成を減らす効果が期待できる、ザクロの健康効果は素晴らしいですね!

「終末糖化産物(AGEs)」は、心血管疾患・骨粗しょう症・白内障などの老化や疾病の原因となり、健康寿命に非常に影響を及ぼす物質で「体内でつくられるAGEs」と「食べ物に含まれるAGEs」があります。

体内でつくられるAGEsとは、高血糖状態が続くと人間の体の細胞や組織を作っているタンパク質に糖が結びつき、細胞の糖化が起きて生成されます。

食べ物に含まれるAGEsとは、いろいろな食べ物・飲み物の中にも含まれ、例えば「ホットケーキ」は、小麦粉(糖)と卵や牛乳(タンパク質)を加熱したものなので、あの美味しそうなキツネ色が糖化した部分でAGEsが発生している状態。一部は消化の段階で分解されますが、約7%は排泄されずに体内に溜まってしまうといわれています。

AGEsの蓄積を防ぐためにも、「糖分の摂り過ぎ」「AGEが多い食品の摂取」に気を付け、ザクロの継続摂取などを心がけて健康的に楽しい人生を送りましょう!

皆さまの健康と笑顔を願っています。

<参考文献>

J-GLOBAL ID:201402227664107089   整理番号:14A0709788

MDPI and ACS Style

Bednarska, K.; Fecka, I.; Scheijen, J.L.J.M.; Ahles, S.; Vangrieken, P.; Schalkwijk, C.G. A Citrus and Pomegranate Complex Reduces Methylglyoxal in Healthy Elderly Subjects: Secondary Analysis of a Double-Blind Randomized Cross-Over Clinical Trial. Int. J. Mol. Sci. 202324, 13168. https://doi.org/10.3390/ijms241713168

AMA Style

Bednarska K, Fecka I, Scheijen JLJM, Ahles S, Vangrieken P, Schalkwijk CG. A Citrus and Pomegranate Complex Reduces Methylglyoxal in Healthy Elderly Subjects: Secondary Analysis of a Double-Blind Randomized Cross-Over Clinical Trial. International Journal of Molecular Sciences. 2023; 24(17):13168. https://doi.org/10.3390/ijms241713168

Chicago/Turabian Style

Bednarska, Katarzyna, Izabela Fecka, Jean L. J. M. Scheijen, Sanne Ahles, Philippe Vangrieken, and Casper G. Schalkwijk. 2023. "A Citrus and Pomegranate Complex Reduces Methylglyoxal in Healthy Elderly Subjects: Secondary Analysis of a Double-Blind Randomized Cross-Over Clinical Trial" International Journal of Molecular Sciences 24, no. 17: 13168. https://doi.org/10.3390/ijms241713168

★記事制作:管理栄養士 松下眞子(まつしたまさこ)

2001年 東京家政大学家政学部栄養学科を卒業。 同年に、管理栄養士国家資格を取得し、管理栄養士としての活動をスタート。 大手自動車メーカーの集団給食業務を経て、糖尿病専門クリニック、内科、健診センターで栄養と生活指導や特定保健指導を行う。

指導件数は延べ2500件以上になり、食と生活習慣・心理状況の関係性が深いことを痛感し、心理学を活かした食事・生活指導を企業や個人向けに行う。

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