【論文紹介】 ザクロポリフェノールのフリーラジカル消去活性と細胞の酸化ストレスへの影響

~「ザクロ抽出物・アントシアニン・アントシアニンを含まないフェロール成分」について~

ザクロには多種類のポリフェノールが含まれていて健康効果が高いことはよく知られていますね。

今回ご紹介する論文は「ザクロに含まれるフェノール化合物の組成を特徴づけること」また「ザクロポリフェノール」を生体内で効果的に活用できるように、それらの「フリーラジカル消去活性と酸化ストレスへの細胞保護能力への働き」調査した研究結果です。

【目次】

1.  ザクロポリフェノールのフリーラジカル消去活性と細胞の酸化ストレスへの影響

~ザクロ抽出物・アントシアニン・アントシアニンを含まないフェロール成分について~

(1)目的

(2)方法と結果

(3)結論

2.   まとめ

1.(1)目的

ザクロの種子、皮、果実に豊富に含まれる抗酸化物質であるフェロール成分(ポリフェノールの一種)を効率的に利用する方法を調査し、活用していくこと。

ザクロの皮や種子の利用によって農業廃棄物を減らして健康増進資源としていくこと。

(2)【方法と結果】

ザクロ果汁のXAD-7抽出物(※1)から、吸着膜クロマトグラフィーを用いて、アントシアニンと共色素画分を分離した。

※1 XAD-7抽出物とは、ポリフェノールの一種。

ザクロの果皮から抽出され、その後XAD-7と呼ばれる樹皮(ポリフェノールを選択的に吸着する樹皮)に吸着されて得られる。

1,ザクロ果汁のポリフェノール量と色素成分

1.56kgのザクロ果汁から、炭水化物、たんぱく質、有機酸、ミネラルを除去し、約6.16gのXAD-7抽出物を生成した。

さらに、セルロース膜吸着剤でさまざまな画分を分離した結果

アントシアニン11%・高分子化合物14%・共色素(アントシアニンを含まないポリフェノールで、主にタンニン)75%を得た。

ザクロの主な色素は、シアニジン-3,5-ジグルコシド、デルフィジン-3-グルコシド、シアニジン-3-グルコシド。

副色素は、エラグタンニン(プニカリンが主成分)が主である。

2,フリーラジカル消去活性・肝癌細胞の保護・遺伝毒性阻害

共色素画分の主な化合物は加水分解性タンニンである「プニカリン」であり、ビタミンCよりも高いラジカル消去活性を示した。

アントシアニンの含有量は抗酸化力と相関関係があり、本研究において抗酸化活性とラジカル消去活性を誘導する主要な寄与物質として特定できる。

ブルーベリージュースやクランベリージュースよりも抗酸化力が高かった。(溶媒組成・抽出技術・時間の違いは未考慮)

ザクロジュース抽出物は、HepG2抽出物(肝癌由来の細胞株)を酸化ストレスから部分的に保護し、H202(過酸化水素)処理後の細胞生存率を60%から80%に増加させた。

ザクロ抽出物の事前インキュベーション(保温・培養)によって、ケラチノサイトにおけるH202誘発ROS(過酸化水素によって誘発された活性酸素種)は減少した。

Cometアッセイ(※2)により、ザクロ抽出物濃度6.25㎍/mlでは、有意な効果は示さなかったが400㎍/ml、800㎍/mlではPC12細胞(※3)における血清/グルコース欠乏によって誘発されるDNA損傷が大幅に減少した。

※2 Cometアッセイとは、DNAの損傷から修復の過程を指標として変異原性を調べる試験方法

※3 PC12細胞とは、ラットの副腎から得られた褐色細胞腫由来の株細胞

(3)【結論】

ザクロジュースと比較して、ザクロXAD-7抽出物とその画分では、総フェノール含有量とフリーラジカル消去能が大幅に高かった。

ザクロXAD-7抽出物、アントシアニン、共色素画分は、ガルビノキシル(※4)およびDPPHラジカル(※5)に対するラジカル消去活性を示した(ESR分光法による)。

中でも、ザクロXAD-7抽出物は最も高い活性を示した。このことから、アントシアニン、加水分解性タンニン、および/またはポリマー化合物の相乗効果を示唆している。

濃縮されたXAD-7抽出物とその画分は、過酸化水素によって誘発される酸化ストレスから「ヒト肝細胞HepG2細胞を保護する」ことができた。

アントシアニンと共色素が酸化ストレスの軽減において一緒に作用することがわかった。

※4  ガルビノキシルとは、フェノールの一種「ジヒドロキシジフェニルメタン」を酸化することで得られる化学物質。

※5  DPPHラジカルとは、抗酸化物質の能力を測定するために使用される化学物質。

2. まとめ

今の時代、ストレス・電磁波や食品添加物・大気汚染など活性酸素が増えやすい状況下。癌は日本における死因第一位です💦

今回の研究によってザクロポリフェノール組成や働きが明確になり、抗酸化作用やガン細胞の抑制など人体の健康に効果的に役立てられると共に、ザクロの皮や種などを廃棄することなく、有効活用して地球にも優しい食環境が広がっていくことをこころから願います。

ストレスをためないことや電磁波から離れて自然に触れることなどを心がけて、日々楽しんで過ごす♪とともにザクロを余すことなく使用した良質なザクロエキスを摂取すると健康度アップしていきましょう(^^)/

<参考文献>

1 Institute of Food Science and Human Nutrition, Gottfried Wilhelm Leibniz University of Hannover, Am Kleinen Felde 30, 30167 Hannover, Germany; kostka@lw.uni-hannover.de 2 Institute of Food Chemistry, Technische Universität Braunschweig, Schleinitzstrasse 20, 38106 Braunschweig, Germany; j.ostberg@tu-braunschweig.de (J.J.O.-P.); p.winterhalter@tu-braunschweig.de (P.W.) 3 Department of Physiology and Biochemistry of Nutrition, Max Rubner-Institut, Federal Research Institute of Nutrition and Food, Haid-und-Neu-Str.9, 76131 Karlsruhe, Germany; karlis.briviba@mri.bund.de 4 School of Natural System, College of Science and Engineering, Kanazawa University, Kakuma-Machi, Kanazawa 920-1192, Japan; matsugoh@staff.kanazawa-u.ac.jp 5 Department of Safety and Quality of Fruit and Vegetables, Max Rubner-Institut, Federal Research Institute of Nutrition and Food, Haid-und-Neu-Str.9, 76131 Karlsruhe, Germany * Correspondence: esatbeyoglu@lw.uni-hannover.de; Tel.: +49-511-762-5589 Received: 13 October 2020; Accepted: 4 November 2020; Published: 6 November 202

Tina Kostka 1 , Johanna Josefine Ostberg-Potthoff 2 , Karlis Briviba 3 , Seiichi Matsugo 4 , Peter Winterhalter 2 and Tuba Esatbeyoglu 1,5,*

★記事制作:管理栄養士 松下眞子(まつしたまさこ)

2001年 東京家政大学家政学部栄養学科を卒業。 同年に、管理栄養士国家資格を取得し、管理栄養士としての活動をスタート。 大手自動車メーカーの集団給食業務を経て、糖尿病専門クリニック、内科、健診センターで栄養と生活指導や特定保健指導を行う。

指導件数は延べ2500件以上になり、食と生活習慣・心理状況の関係性が深いことを痛感し、心理学を活かした食事・生活指導を企業や個人向けに行う。

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